乱歩デイズ

蜘蛛男 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

蜘蛛男 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

やめようと思いつつ、ついつい手を出してしまいました。
江戸川乱歩「蜘蛛男」


言い訳になりますがこの作品は特別なのです。おそらく私が初めて手にした乱歩作品なのです。小学校3,4年生ぐらいでしょうか・・・。

当時学級文庫に置いてあったひときわ恐ろしい装丁の、あの影絵のような表紙は春陽堂棟方志功の物だと思われるのですが、なにやらいけないモノを手にしているような気持ちで借りて帰った記憶があります。


のっけからエログロ趣味全開のこの作品を、家族から隠すように読んでいた幼い私でしたが、小学生のまだ汚れていない精神には耐え切れず、確か途中で挫折した覚えがあります。

読み返してみると、意味は分からずとも怪しげな気分を確かに感じていた当時の自分を思い出します。これはやばいわ、隠れて読んで正解だ。


「孤島の鬼」に比べると確かに娯楽小説としてのおもしろみは弱いかな、と言う気はします。たくさん詰め込みすぎて収集が付かなくなっているような、乱歩自身もあまり気に入った出来ではなかったようです。


大人になってしまった私は、とてつもなくボンクラなこの作品の明智先生よりも自分に正直な変態蜘蛛男のほうを応援してしまっていました。


彼の夢であったパノラマ館の完成を見たかったあ、と本気で思ってしまった自分は汚れてしまったのでしょうか?


ではまた。