一九三四年冬‐乱歩

寒い、雪が降るそうです。

一九三四年冬―乱歩 (新潮文庫)

一九三四年冬―乱歩 (新潮文庫)

いまさらですが久世光彦「一九三四年冬‐乱歩」を読みました。


おもしろかったです。スランプの乱歩の内面とその奇行、細かい小物などをちりばめることによるリアリティあふれる背景、乱歩の作品というにはやや美しすぎる気もしますが、しかし、乱歩イズムにあふれた作品内作品「梔子姫」


あるいは乱歩の本当に描きたかった作品はこの「梔子姫」のような作品だったのかもしれません。
若いころ読んだときにはその毒の無さにあまりピンと来なかった「押絵と旅する男」のような一種幻想的な世界と異形の美が織りなす美しくも哀しい物語、商業主義的にある意味納得のいかないまま書かされていたような当時の作品に嫌気が差していたであろう乱歩が実際に書いたものだと言われても納得のいくものと言えるかも知れません。


編集者から逃げ回りながら苦悩しつつ執筆する様子や、美しい金髪女性とのクイーン談義、乱歩と猫に対する考察など、乱歩ファン、ミステリファンにはたまらない要素がつまった傑作です。


余談ですが、
「梔子姫」はとても美しくも妖しく描写されているのですが私はどうしてもポケット小僧を連想してしまいました。


ではまた。