古本屋の神様
時々、なんとも言えず不思議なお客さんに出会うことがあります。憂鬱な気持ちの雨降りの夜、少し酒臭いその男性はやってきました。
「本当にあっちもこっちも、個人経営の本屋も古本屋も無くなってますよねえ。不景気ですしねえ」
なんて気弱な愚痴をこぼす私に、そのお客さんは笑顔で静かにこうおっしゃいました。
「あなたは自分が何をするべきかわかっているのでしょう?だからこのお店があるのです。不景気も世界恐慌も関係ありません。目の前にあるものとしっかり向き合い、ひとつひとつ丁寧に対応するだけなのですよ」
なんだか不思議なそのお客さんは「またいらしてください」という私の言葉に「来るかもしれないし来ないかもしれません。それはわかりません」と、またまた不思議なことを言って雨の中に消えて行きました。
神様だったのかもしれんなあ。翌朝、ぼんやりとした頭の中で昨夜の言葉を反芻しながらそんなことを思っていました。
ありがとうございました。
ではまた。