角田光代「愛がなんだ」

北見のシロウくんのことを思い出していたら、次々と昔の友達が尋ねて来てくれました。うれしいことです。

愛がなんだ (角川文庫)

愛がなんだ (角川文庫)

「私はただ、ずっと彼のそばにはりついていたいのだ」−OLのテルコはマモちゃんに出会って恋に落ちた。彼から電話があれば仕事中でも携帯で長話、食事に誘われればさっさと退社。すべてがマモちゃん最優先で会社もクビになる寸前。だが、彼はテルコのことが好きじゃないのだ。テルコの片思いはさらにエスカレートしていき・・・。直木賞作家が濃密な筆致で綴る<全力疾走>片思い小説!文庫裏表紙より。


リアルでグダグダな人間関係の中で異常なほどリアルな30前後の男女の会話。頭の中であれこれ見てきたダメ男ダメ女たち(自分含む)が次々と頭に浮かび集中できない。


ダメだけれど恋ってすばらしい、人を想う気持は尊いなんてふうにはまとまらない。ジャンボリーな青春小説には必ずあるはずの感動を共有したり、感情をぶつけ合ったりするシーンも全くない。それぞれがそれぞれのやり方をまったく意固地に貫き、かと言って波風は立てたくない。<全力疾走>している方向は本当にそっちでいいのかい?


角田光代さんはうちの店では自分より一回り以上上のオジサマ、オバサマたちに大人気です。ストレートな青春モノにめっぽう弱い今の自分ではありますが、行きつく先は角田さんなのかもしれない。アフタージャンボリーのグダグダな恋愛劇を懐かしく思い出す時が果たして自分にも来るのでしょうか。


「愛がなんだ」そこに!は付かない。ただ小さくつぶやくのみ。


ではまた。