「カラフル」な「ボトルネック」

森絵都「カラフル」がアニメ映画になったそうで。

カラフル (文春文庫)

カラフル (文春文庫)

原作は数年前に読んでラストで衝撃を受けました。ありがちなオチではあるのですが、なぜ自分は気が付かなかったのか?今思えば森さんの流れるような文章に流されるまま、余計なことを考える間も無く、ラストまで一気に読まされてしまったのだと思います。とても楽しい読書体験でした。
現実に根ざしつつ、希望にあふれたとてもよい作品です。オススメ。


でもって米澤穂信ボトルネック」です。

ボトルネック (新潮文庫)

ボトルネック (新潮文庫)

この話、構成はカラフルに少し似ています。自分が存在しないパラレルワールドで、自分が存在しないからこそ見えてくる自分と対峙するという前代未聞の青春小説です。


※もし、新鮮な気持ちでこの本を読みたいと思っている方はこの先を読まないほうが良いかもしれません。ネタバレはしていないつもりですが。


なぜこんな世界に来てしまったのか?なぜ彼女は死ななくてはいけなかったのか?いくつもの謎を解明するために主人公は調査を続けるのですが、それによって知らされる衝撃の事実とは・・・。


このわかってしまった事実がとても痛い。いわゆる片仮名で書く「イタイ」ではなく、本当に痛いのです。それはこういった特殊な世界に放り込まれた彼にとっての痛みと言うだけではなく、読者である私にもそのまま直に伝わってきます。「この主人公は俺だ!俺なんだよ!」


結末の、すべてが色を無くしてしまいそうなラスト一行からしてまるで「カラフル」とは正反対です。なのに私にとってこの読後感はなぜかとても心地よかったのです。


それがなぜなのか?正直よくわからないのです。夢もチボーも無いこんな物語は私の好みではないはず。
ただ「思考に限界は無い」というサキの言葉はなんだか胸に焼き付いています。たとえ主人公を救える言葉ではなかったとしても。


ではまた。