井上夢人『魔法使いの弟子たち』

魔法使いの弟子たち

魔法使いの弟子たち

すべてを奪われ特殊能力を与えられた三名の選ばれし者。人類とウイルスの最終戦争がはじまる。帯より。


このアメコミ原作のハリウッド超大作のようなあらすじ、この通りなんだけど何かが違う。
ファンタステイック4?スーパー3?岡嶋2?いいえ井上夢1です。(うまい俺!)


やっていることは大真面目、書き手のテクニックも抜群、その上でド派手にはじけちゃいました、と言う感じ。ものすごくおもしろく読ませていただきました。なんかもう、やりすぎちゃって笑える、というおもしろさ。


この作家さん、大好きなんでほとんど読んでいるんですが、毎回設定がイカレて、いやイカしてます。前作の長編『オルファクトグラム』では匂いが目に見えちゃう主人公がその特殊能力を使って事件を追うという、これまたとんでもない超能力もので、しかしまたすこぶるおもしろいエンタテインメントでした。


しかし、今作のぶっ飛び具合(読んだ方は分かると思いますが文字通りぶっ飛びます)は群を抜いてます。ストーリーテラーとしてのうまさはそのまま、丁寧で優しげな筆致はそのままに天が叫び地が吠えるってえ超ド級のスペクタクルやっちゃった。前半と後半の展開の温度差がハンパねえ。


作者が作者なだけに、何を書いてもネタバレになりそうでストーリーに関しては触れませんが、トンデモ好き、イカモノ好きの、我こそはと言う猛者はぜひ挑戦してみてください。損はさせませんよ。得もしないかも。


一度読んで満足して持ってきていただき、店主との語りに付き合ってくださればそこそこ高く買取もします。今ウチにいる子はそうやって帰って来た出戻り娘ですんで可愛さもひとしおです。


さて、ここからは全くの蛇足ですが、


井上夢人さんの作品に80年代少女漫画風アオリをつけるとしたら?


「ゆめちゃまのふしぎどきどきびっくり箱!」


というのはどうでしょう?


ツイッターでは苦笑いな感じの反応でしたが私は結構気にいっちゃいました。
中学生ぐらいの頃読んでた妹の漫画雑誌はこんなのばっかでしたよ。全国二百万のろまん乙女なら分かってくれると思います。たわ言ですが。



ではまた。