『マルドゥック・スクランブル』感想

科学技術発祥の地‘楽園’を訪れたバロットが知ったのは、シェルの犯罪を裏付ける記憶データが、カジノに保管された4つの100万ドルチップ内に存在すると言う事実だった。チップを合法的に入手すべくポーカー、ルーレットを制してゆくバレット。ウフコック奪還を渇望するボイルドという虚無が迫るなか、最後の勝負ブラックジャックに臨んだ彼女は、ついに最強のディーラーと対峙する。_____喪失と安息、そして超克の完結編


いやあ、おもしろかった。
2巻中盤からラストまではほぼ一気読みでした。この本は全3巻となっておりますが実質は1冊の長編ですね。

圧巻なのはカジノでのギャンブルシーン、阿佐田哲也深夜特急の大小ばりの駆け引きと緊張感、久々に手に汗を握りながらの読書を体感しました。

しかし、この作品の白眉は実質数十ページしかない実に濃密なラストのアクションでしょう。ここまでの全ての事象を内包した作品的説得力に満ちた悲しくも必然の闘い。三人の魂が血を流し、涙を流す。


今となっては使い古された感のある、「自己の存在をかけた闘い」というものをこれだけ説得力のある作品に仕立て上げた力量に素直に感動しました。共に苦手分野であるサイバーパンクでハードボイルドな(実はよくわからないのですが)世界観をこれだけ楽しませてくれるとは天晴れです。


しっかし、ネズミ、最後までかっこよかったなあ、ネズミよう。


ではまた。