夢に見るほど

トムは真夜中の庭で

トムは真夜中の庭で

『トムは真夜中の庭で』

児童文学の名作ですよね。読んだこと無かったんですこれが。いや、読もうと思ったことはあったんです。でもなんかしっくりこなくて挫折していたんですね、子ども時代。


お客さんとの話で「あらあ、読んでないの?おもしろいのに」と、言われ読み出しましたが、あいかわらずとっつきにくい、これは進まないわけです。なんだか情景描写が細かくて話がすすまないわ、主人公も周りの人間も地味でおもしろみがないわ、と・こ・ろ・が!

あるキャラクターが登場してから、俄然おもしろくなってきます、真夜中の庭で繰り広げられる謎の現象、これはファンタジー?SF?それとも幽霊譚?謎が謎を呼び、ページをめくる手は止まりません。すこしづつ、絡まっていた糸がほどけていくように謎は解かれていくのですが最後に大きなサプライズともう、涙涙、うぅー!


ラストシーンが非常に美しい。前半の繊細すぎていらいらするような細かい描写も実はすべて必要であったんだとわかります。読後はまるで一枚の美しい絵画を見たような静かな満足感が広がります。


本当にすばらしい作品です。安易に人を殺したり、無理やり別れさせたりしなくても感動できる作品はつくれるのです。全てのクリエーターに読んでもらいたい、というか昔の大林監督が映画にしそうな話ですなあ。ボーイミーツガール物として読んでも、xxSFとして読んでもファンタジーとして読んでもおもしろい。恋愛度は薄いですがそこがいいですなあ、映像化する時はそこを大事にしていただきたいって何様だ俺は。


ではまた。