池上永一『シャングリ・ラ』

池上永一シャングリ・ラ』を読んでいます。上巻を読み終わりほっと一息。

シャングリ・ラ 上 (角川文庫)

シャングリ・ラ 上 (角川文庫)

加速する地球温暖化を阻止するため、都市を超高層建造物アトラスへ移して地上を森林化する東京。しかし、そこに生まれたのは理想郷ではなかった!CO2を削減するために、世界は炭素経済へ移行。炭素を吸収削減することで利益を生み出すようになった。一方で、森林化により東京は難民が続出。政府に対する不満が噴出していた。少年院から戻った反政府ゲリラの総統・北条クニコは、格差社会の打破のために立ち上がった!裏表紙より


これここだけ読んでもちっとも面白そうには思えないねえ。


実際最初の手ごたえはそうでした。どうにもこうにも話が見えてこず、やたら濃いキャラクターたちと陰鬱な世界観ばかりがよくわからないまま語られる。

海外SFなんかでもたまにあるのだが、情報量が多すぎてなかなか進まず、だけど何かありそうで気になり、どうにもやめられない。


そう思っていたら来ましたよ下巻に入って、今までちまちまと紹介されてきたキャラが、設定が、奇想天外なアイテムたちが、そして世界そのものまでが一気に動き出す。バラバラに描かれてきたパズルのピースと様々な謎がラストへ向けて収束していく疾走感。これでもかというほどキャラ立ちしているキャラクターたちが世界の謎を、矛盾を、不公平をぶっこわすべく派手に動き出す。小説的ダイナミズムここに極まれり。先を読むのが楽しみのような終わってしまうのが怖いようなまさに読書の醍醐味を味わっております。


下巻は3分の一ほどしか読んでいませんが、まだまだ予想外の方向へと転がっていきそうな気がします。すごく楽しみ。
時間を作って残りは一気にいきたいと思っています。


ものすごくおもしろい本を最後まで読みきった時はもちろん大満足ですが、あまり期待していない微妙な感じの本を我慢して読んでいるうちにじわじわとおもしろくなっていき、たまらん感じになっていくのもまたこたえられないものです。


ではまた。