サラ・パレツキー『サマータイム・ブルース』読了。
「わたしに命令できるのはわたし自身だけよ」 V・I・ウォーショースキー
サマータイム・ブルース (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 104‐1))
- 作者: サラ・パレツキー,山本やよい
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1985/06
- メディア: 文庫
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パレツキーが面白いというのは聞いていましたがハードボイルドというので腰が引けていた部分がありました。今回もかなりの読書家の方に譲っていただいた本の中にシリーズの後の方が入ってきたのを見て、ちょいとしたきっかけかなあと一巻目を手に取ったわけなんですが・・・。
なんだよこれ、よくあるハードボイルド探偵モノの男と女を入れ替えただけじゃねえか、と最初は思ったのですが、読み進めているうちにどうもこのへんてこな名前の女探偵に興味が出てきましてですなあ。
ほおほお、お父さんが刑事をやっていて、ほおほお離婚なさっていて、ほおほお弁護士やってたんですかあ、そうですか、ああ空手もたしなんでらっしゃる、で、なぜ女だてらに探偵なんかを・・・?
探偵業に関してもやることなすこと達者です。あの手この手の潜入捜査に始まり、いろんなコネをこねこねしたり、裏組織に2人がかりでぼこぼこにされても相手のアバラくらいは折っちゃる、てな具合でこれは相当修羅場をくぐっていらっしゃる、いったい今までにどんな事件を・・・?
こういう風に思わせてしまったら作者の勝ちですなあ。
主人公ヴィクの友人関係はもちろん、言動や、食べ物の趣味にいたるまで、何を知ってもうれしくなる。
もうどうでもいいや殺人事件。ってな感じになりそうになったのだけれど後半の盛り上がりでちょっと目が覚める。
やがてあきらかになる事件の真相はそれほど意外なものではないのだけれど、それによって生じる様々な人間模様に心が動かされます。
直接的な描写はけして多くはないのですが、ここまで主人公に肩入れしてしまった読者である私にはヴィクの悲しみがつらさが、突き放すように淡々と描かれたラストに映し出されるようしみじみと染みてくるのを感じました。
こうやって人はシリーズものにはまるんだな。
『銀河英雄伝説』とかもきっとそうだ。読んだことないしあんまり読もうとも思わないけど、読んだら大変なことになるんだ。『アンジェリク』とか『グインサーガ』とかも。
遅かれ早かれ次の巻に手を出すのは間違いないと思われます。
明日はお休み浪漫堂。
ではまた。