恋の札沼線

当事者がここを見ている可能性は限りなくゼロに近いので書いちゃいます。
先日電車の中で見た光景。


終電近くのJR。そこそこ混んでいる時間帯、私はドアの近くに立って文庫本を読んでおりました。
近くに女子高生ぐらいの女の子が立っていて背中を向けてうつむいております。
電車が止まって何人かのお客さんが入ってきまして、その中の彼女と同じくらいの年頃の男の子を見て驚く女の子。
「わあ、うそ、偶然?」
「偶然。うそ、待ってた。ジャンプとか立ち読みして」
「ええーっ!」とまた驚く女の子。


どうも付き合ってるという感じでもなく、微妙な距離をとりながら、でも楽しそうに話をしている二人。
「マンガばっかり読んでちゃだめだよ」
「だって小説とか意味わかんねえし」
「きちんと読めばおもしろいんだって」
「無理くせー」


少しの沈黙の後。
男の子が突然、「これ」と、コンビニの袋を彼女に突き出しました。


「えー、何?えー、何これ、うそ」
「調子悪いって言ってたじゃん」
「うそー、えー、ありがとう、うそー、うれしい」


ええと、その胃薬は男の子のボケじゃないのかな?
そこは笑うところでほら、私が昔好きな子を映画に誘うのに「ゴジラ観に行かない?」って言ったような。


まあ、でも女の子は普通に喜んでるから結果オーライか。


でもって、二人で一緒に帰るのかと思ったら、女の子は次の駅ですぐ降りてしまう。
「ありがとう。バイバイ、またね」
「おう、じゃあな」
って、一駅だけのこの数分間のためだけに、彼は長いこと立ち読みして待っていたんだねえ。


二人の会話を聞いていたのは私だけじゃないと思います。
なんとなく車両の中の空気がほわんと優しい感じになっておりました。
がんばれ少年、きっとうまくいくよ。脈はアリだ!


すごく、しあわせな気分になったのでここを見てくれている皆さんにもおすそ分け。
春ですなあ。


ではまた。